シルクロード餃子を巡る旅①~はじまりはすべて中国
はじめに
「もしも、一生に一つのものしか食べられないとしたら何を選ぶ?」
小学生のようなくだらない質問に、私は即答できる。
“餃子”
餃子が好きだ。焼き餃子も水餃子も、揚げ餃子だって素晴らしい。
中身は豚肉は定番だし、ラムや牛だって最高だ。
2019年秋、当時大学5年生だった私は、卒業旅行として次のテーマを自分に課した。
「中国から大陸に入り、シルクロードを伝ってユーラシア大陸を西に向かい、どのように餃子が変化していくのかを食べ歩く」
知っている人も多いと思うが、餃子的な食べ物はアジアからヨーロッパまで各地にある。
まずなにを以て餃子と定義するかだが、これがなかなか難しい。さきほど挙げたように、中身も調理法も多種多様だからだ。私はひとまず、“粉もので肉類を包んで加熱したもの”と仮定した。
はじまりの街、西安
最初の出発地の設定は簡単だった。
なぜなら、シルクロードの東端といえば長安、いまの西安である(いや、奈良が東端だという意見もあるだろうけれど置いておこう)。
西安といえば粉もの天国。主食は米よりも粉。最近はやりのビャンビャン麺発祥の地である。歴史的にも文化的にも、まさに出発地にふさわしい。
私は、西安からウルムチに入り、そこから国際寝台列車でカザフスタンに向かい、ウズベキスタン、そしてジョージアにたどり着く計画を立てた。最後の夏休みをまるまる使った、約一か月の旅路だ。
ひとつ懸念点として、「女の子が一人で行くなんて危ない」という母親の心配があった。ところが、私が毎日いかにシルクロードがロマンに溢れているか語っていたところ、ついには「私も一緒に行ったら安心だね!」と、当時勤めていた会社を辞めて付いてくるに至った。
その際の旅行記は、母親も公開しているので併せてご覧ください↓
西安。2018年に1年間中国に留学していたので、中国語も話せるし中国自体にこれといって新鮮味はないが、西安はとにかくでかい。中国は基本的にすべてがでかい傾向にあるが、道路から観光地まで、あらゆるものがとにかく規格外にでかい。
とりあえず行った観光街、回民街で小籠包、涼皮(リャンピー)を食べてみた。小籠包は普通に美味しい、予想通りの味。涼皮とは、粉からつくられた冷たい麺類の一種。
この街の特色といえば、名前の通り回民族が多いということだろう。回族とは、中国に住むムスリムの少数民族。街には羊肉串や、ナンのお店がちらほら。もうすでに、シルクロードが始まってる感満々だ。
西安で一番うれしかったのは、留学時代大好きだった火鍋屋さん“呷哺呷哺(しゃぶしゃぶ)”に行けたことだろうか。そういえば日本に出店するという情報が出てから数年経ったけど、どうなったんだろう……。
せっかくなので兵馬俑も見に行ったけれど、入場口から展示室、出口に至るまですべてが広すぎて、ぐったりした記憶しかない……。兵馬俑は5分だけ見て帰った。
もちろん(?)西安事件が起きた張学良の公館跡も尋ねた。
“人民”に揉まれるウルムチ
新疆ウイグル自治区ウルムチには飛行機で向かった。まずウルムチ駅でカザフスタンに向かう国際寝台列車の切符を買おうと思ったのだが、これが辛すぎた。
中国あるあるだが、駅に入場するのに身体検査があり、長蛇の列。いったいどこからどう並んでいるのか、並んでいる誰もわかっていない。割り込み、押し出しは当たり前。
この感じ懐かしいなあと思うのと同時に、割り込まれるとやはりムカつく。コロナを経たいまではどうなっているのかわからないが、こういう場所では、前に並んでいる人にぴったりくっつくように並ぶのが防衛術だ。
駅に入ってからももちろんチケット売り場に長蛇の列。ウルムチからカザフスタン行の鉄道は、2泊3日で263元。当時で4000円くらい。そう考えるとかなり安いな。
駅からタクシーに乗るのも長蛇の列。100人は並んでいるのを待つ気力もなく、ウイグル人のおっちゃんがやっている白タクに乗ることにした。粘れば安くなるだろうけれど、正規料金の2倍くらいだからまあいいかな。私はバックパッカーだと自分で自称したことはないので、法外に高くなければあまり交渉しない。
ウルムチでは、国際大バザールで羊肉とナンを食べてみた。本当はウイグル自治区にもトゥギレという水餃子があるのだけれど、ここ、完全に漢民族向けの観光地で、すべての屋台がスマホ決済しか使えない。
私は留学していたからWechatペイなど使えるけれど、残高が少なく使いたくなかったので使いたくない。現金じゃだめ?と聞きまくったけど10軒くらい断られた。唯一優しいおじさんが許してくれて、ありつけたのがこれ。
外国人にはしんどい、デジタル社会中国の洗礼を受けました。