【後編】ベルギー人と、中国・ミャンマー国境にいった
※途中、ショッキングな画像があります。お食事中の方などはご注意ください。
ヤツの洗礼
ジノー族でミッキーにあった次の日。同じく宿で知り合ったベルギー人のリンと一緒に中国・ミャンマー国境を見にいくことになった。
彼女は大学を休学してヨーロッパを旅行していたらしいが、アジアは初めて。初のアジア旅行に、1人で非漢字圏から来て中国のシーサンパンナをチョイスするのがすごい。
なんでも数週間は滞在する予定らしい。
彼女とのコミュニケーションは英語で行なっていた。
私はもともと5歳児レベルくらいの英語を喋れたはずだが、中国に留学してからは「He 说 ~~~」「那 Let's go 吧」のようなクレオール英語しか喋れなくなってしまっていた。
とはいえ、当時はなんらかの方法で大学のこと、旅行のこと、プロバガンダのことなどたくさんお話をして国境までのバス3時間を過ごした。
着いた!ここを越えるとミャンマーに行ける。
北朝鮮国境などと違い、物々しい雰囲気はゼロ。中国人観光客向けのお土産屋や旅行会社が立ち並ぶ。
しかし国境線はこの先にあるため、国境を眺めるという状態とは程遠い。市場で腹ごしらえをしたあと、近くのタイ族の観光村にある国境を目指すことにした。
こういう麺料理、なにかわからないけど美味しい。
タイ族の村までは白タクで10分ほど。乗る前にバスターミナルのトイレへ向かったところ、ヤツに遭遇した。
ニーハオトイレだ。
今まで壁がないトイレは何度か経験したことがあるが、これはなかなかの特級。
正直普通に野ションしたほうが百倍清潔感がある。
「私は日本人です!」
洗礼を受けながら、タイ族の村へ向かった私とリン。
ここもまた観光地だが、中国とは思えぬゆったりとした時間が流れていてなかなか良い場所だった。
こういうココナッツジュースって見た目の期待値を味が越えることはない。
10月初旬にもかかわらずとにかく暑い。
村の端っこにあった国境線。
この川の向こうが、ミャンマーなんだ。
特に誰もおらず、ただゆったりと川が流れているだけ。
これは地元の人はよく行き来しているというのも頷ける。今まで見て来た国境の中で一番緊張感がなく、地元に馴染んでいる。
ただこれを見るためだけに来てよかった、と思わせる雰囲気がある。
それはそうと、行きのバスにしろ帰りのバスにしろ、少し困ったことになった。
流石にこれだけ密接した国境地帯ゆえなのか、バスで1、2時間走るごとに検問を受けなければいけない。
検問では武警がバスに乗って来て、全員身分証の提出を求められる。
リンを見た瞬間、武警は「OK、外国人ね」という対応になる。しかし私が日本国のパスポートを見せると、「は?お前も外国人?!」という対応に変わる。
これは私がモンゴロイド顔だからだろうが、それにしてもなぜかリンよりも私のほうがより怪しまれるのだ。
ついには私だけバスを降ろされ、検問所に連れていかれた。行きのバス時刻を聞かれ、本当に乗っていたのかを連絡してチェックする徹底ぶり。
そして「本当に日本人?何人?」と武警に尋ねられる始末。
そういわれても、下手くそ中国語で「我是日本人!(私は日本人です!)」と答えるしかない。
「ふーん、日本人がここに何で来るの?」
「国境を見に」
「国境を見てどうするの?」
「楽しむ…」
武警のお兄さんはよくわからん、という顔をして諦めて帰してくれた。
あとで聞くところによると、どうやら中国経由でミャンマーへ抜ける脱北者御用達ルートがあるというのだ。私は脱北者もしくは、脱北者のヘルパーをする韓国人協会関係者と疑われたのかもしれない。
そもそも、シーサンパンナから片道3時間の国境山奥に中国語下手くそな日本人とベルギー人女子2人がいたら怪しむのも当然だ。
おわりに
宿の近くに夜だけ現れる衛生観念ゼロの串焼きは絶品だったし、シーサンパンナでは何を食べても美味しかった。
その後リンとは一度も会っていないし、Wechatで連絡も取れなくなった。
しかし、前編に登場した中国人とはひょんなことから彼の実家で熱烈歓迎されることになったりと、未だに忘れられぬ地になった。
そうはいっても、シーサンパンナの公園にあったこの看板以上に衝撃的なものはなかった。
シーサンパンナには、確かに蒋介石がいた。