【後編】船で大阪から上海まで行ってみたら、絶景とその代償がすごかった
2日目 憂鬱な東シナ海と謎の水餃子タイム
2日目、船内アナウンスで目を覚ますと、外はもう一面の海。周りには何もなかった。船内も昨日と違って大きく揺れている。大きな揺りかごに乗ってゆっくり揺らされているような動きなので、揺れ方を掴めば転ぶことはないと思う。甲板は塩っぱい海風が強くて、目がぱさぱさになる。
朝食は中華式か洋式かどちらかを選択する。中華にしてみた。油条、饅頭、肉まん、粥って炭水化物ばっかじゃん、美味しい。中国を感じる。
私は乗り物酔いには弱い方ではないと思う。バスとか車で気持ち悪くなることはほぼないし、船に乗るは大好きだ。以前かなり揺れる漁船に乗った時も大丈夫だった。
でも、今日はグロッキー。普通の船酔いみたいな気持ち悪さというよりは、じわじわ無気力になる感じ。酔い止めを飲んでみたけどあまり効かない。とりあえず朝食を食べたらまた寝た。この揺れ、横になっている分には結構心地がいい。
昼食。憂鬱な気分のままカレーを食べる。学食のカレーって感じで良い。電波がないからネットも繋がらないし何かする気にもなれなくて、Kindleで購入してた安彦良和『ガンダムTHE ORIGIN』を24巻全部読んでしまった。面白かった。
同室の友人と中国人の鄭夏ちゃんもぐったり横になっている。夜ご飯はそこまで食欲がないので自販機のカップラーメンですませた。
そう、なぜなら今日は夜の9時に謎の水餃子タイムがあるから!
2日目の夜9時頃になるとチャイム放送で「水餃子ができました。食堂にお集まりください。」と流れる。この情報は他の人の旅行記で知っていただけであって、船のホームページにもパンフレットにも記されていない、謎の隠しイベントだ。
食堂に行くと300円ほどで謎の水餃子券を得ることができる。
というか普段から昼食と夕食のメニューに水餃子はある。なぜこの日のこの時間にだけ水餃子が振舞われるのか?謎だ。普通に美味しい。
昨日はシャワーに入っていない。今日こそは入らないといけなかった。シャワールームも普通に清潔で使い勝手がいい。ただドライヤーを受付で借りなければいけないのが面倒臭い。
23時過ぎにシャワーからあがったら、受付はもう閉まっていた……。そうか受付時間内に借りないといけなかった。どうしよう。
甲板に出た。甲板の海風は相変わらず強風で、ドライヤー代わりにできなくもない。8月なのに結構冷える。周囲には何の明かりも、何の物体も見えない。ただ月明かりだけが異様に光って見えた。なんか夜の海って怖い……。
ある程度髪が乾いて部屋に戻ると、塩分で髪がべたべたした。
3日目 いきなり揚子江
アナウンスで目が覚めた。あまり船が揺れていない。
海が茶色い。これよく写真で見る上海の色じゃん!海っていうか、もう揚子江に入っているみたい。
10:45頃、上海外灘に到着。天気良過ぎない?
タラップを降りてバスでターミナルへ。入国手続きは空港と同じだ。航路の入国検査にも2018年4月から始まった指紋検査が導入されていた。指紋を登録すると「買収ありがとうございました」と謎日本語が表示されるのが気になった。
さいごに
この二泊三日、瀬戸内海から揚子江に至るまで海を眺め放題だった。こんなに旅情深い移動手段ってなかなかない。夕日も夜景も、船内の怪しい日本語表記も完璧だ。船酔いも思っていたよりはひどいものではなかった。
でも、本当の船酔いは陸に上がってから襲って来た。歩いていても、寝ていても、座っていてもとにかく視界が揺れる。気持ち悪いとかではない。明らかに船内にいるような感覚がずっと残る。車に乗った後に降りるともっとひどく、軽くふらつく。
陸酔いといって、海上で数日間過ごすと起きる現象らしい。
その後上海観光をしている間も、留学先である武漢に着いて入学手続きをしている間も、結局船の中のような気分で過ごすことになった。