サイゼ、共産党、スタバ…ちょっとディープな上海観光案内
はじめに
上海に二回行ったことがある。一回目は留学のために船で大阪から上海まで行ったとき。通過点ではあるものの二泊して外灘豫園などのメジャーな観光スポットはまわった。
二回目は就活のために留学先から行ったとき。どちらが楽しかったかというと断然後者だ。訪れた場所のディープ度が違うからである。そのとき訪れた観光スポットを紹介する。
上海旅行の参考にしてほしいとは言わないが、気が向いたら行ってみて欲しい。
テーマパーク?世界一の巨大スターバックス
2017年に上海にオープンしたスターバックスの高級業態「ロースタリー」は、広さが世界一なことはもちろん、その中身も度肝を抜かれる。
まず建物、でかい。謎のドアマンが立っている時点で普通ではない。
中はテーマパークのようになっており、豆が焙煎されるところからコーヒーになるまでを見学できる。
観光客がたくさんいるため、コーヒーショップとしての居心地はあまりよくない。
大量のパンは眺めるだけで人を幸せにする。
メニューや価格もまた通常ではない。中国人のスタバ好きがよく伝わる。
おそらくこれから上海の新しい観光スポットとしてガイドブックに載るのではないか。
インスタ映えスポットに大量の共産党員!中国共産党第一回全国代表大会会址
上海に新天地というオシャレスポットがある。
昔の建築をリノベして、レストランや雑貨屋が集まったストリートである。気取ったテラス席はお昼からビールを飲む外国人で溢れる。そんな一角に、明らかに一つだけ空気の違う場所がある。
共産党の第一回全国大会が開かれた建物であることを記念した、中国共産党第一回全国代表大会会址だ。
まず中に入ると、大量の共産党員がツアーか何かで来ていて、党旗にむかって何かを暗唱している。党規約かな?
中国の歴史記念館には、基本的にお決まりの型がある。まず展示入り口で歴史を学ぶ必要性を説いて、具体的な事件を羅列する。そして最後は習近平が実際に見学しに来たとか、演説で触れたとか、つまり必ず習近平で終わる。
ここも例外ではない。むしろパワーアップバージョンと言って良い。
謎の空間に習近平の演説が流れ、終わると来場者から拍手が巻き起こる。やはり上海は違う。
まわりの新天地とのギャップが凄まじい。
お洒落でモダンな上海に飽きたら、ぜひ中国共産党第一回全国代表大会会址で“中国”を感じよう。
自分も近代の一部であると自覚できるサイゼリヤ
私はサイゼ飲みを愛してやまない。
そこそこ美味しいワインと、ワインに合うパンツェッタやピザが低価格で自由に飲み食いできる。
そんなサイゼリヤは中国にも進出している。
中国でサイゼリヤ?美味しくなさそう、日本より高そう…そう思う人もいるかもしれないが、断じてそんなことはない!
まずメニューを見て欲しい。
基本的には日本のメニューを踏襲しているものの、中国独自の料理もある。
一番注目して欲しいのが値段の安さだ。生ハムとサラミとモッツァレラチーズのセットで28元!?(日本円で約450円)
中国でイタリアンがこの低価格で食べられるのは異常事態だ。他のパスタ類も日本のサイゼとほぼ同額、下手したら少し安いかもしれない。
もちろんもっと安いパスタは中国のレストランに存在するが、安かろう悪かろうである。
サイゼ飲み常連にはおなじみランブルスコロゼももちろんある。価格は約1000円ほど。安価でおいしいワインの少ない中国において、価格革命である。味ももちろん美味しい。
ところで、私は普段自分が日本人であるということにアイデンティティを感じない。
オリンピックで日本人が優勝して「日本人であることを誇りに思う」という感覚がない。偶然日本列島に生まれ、日本国籍を持っているという定義に感慨を持たない。「日本人として過去の戦争での加害を恥じる」とか「日本や日本人がバッシングされたら自分が傷つけられたように思う」という意識も乏しいかもしれない。それは中国に留学してからも同様だった。
しかし、エスカルゴのオーブン焼きを食べた瞬間、ランブルスコロゼを飲んだ瞬間、身体中に日本人であることへの自覚と肯定がほとばしった。そして気づいてしまった。
私もまた国民国家という幻想に飲み込まれた近代の一部なのだと。
さいごに
ここに書いたスタバ→共産党創建歴史陳列館→サイゼリヤの流れは、基本的に私が留学先である武漢から上海まで旅行した際の最終日の行程と同じだ。
スタバを満喫し、歴史に触れ、サイゼリヤで空腹を満たしほろよいになった私は、武漢に帰るために上海浦東空港へ向かった。
……乗り過ごした。